頭皮に使う育毛剤の成分表に、「D-パントテニルアルコール」という名前があります。化粧水やクリームの裏で見た「パンテノール」と、同じものだろうか。頭の「D-」や、末尾の「アルコール」は何を表すのか。公的な資料での名前と、顔に使う製品でも見かける理由、そして読む欄はどこかを、編集部がまとめました。
D-パントテニルアルコールは、厚生労働省の通知と医薬部外品原料規格2021に、同じ名前で載っています。成分表の表示と同じ、公的な名前です。医薬品の一般的名称(JAN)の「パンテノール」は、化学式と分子量が同じ名前です。通知では、化粧水・クリーム等・パックの項に有効成分の前例があります。入っている目的は、その製品の効能効果の欄で読みます。

「D-パントテニルアルコール」は、通知と原料規格に載っている公的な名前
成分表の「D-パントテニルアルコール」は、厚生労働省の2008年の通知でも、同じ名前で書かれています。「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リスト」という通知です。そこで示されている規格は、医薬部外品原料規格です。
医薬部外品原料規格は、原料の名前と品質の決まりをまとめた公定の規格です。2021年版に「D-パントテニルアルコール(D-Pantothenyl Alcohol)」の条があります。化学式はC9H19NO4、分子量は205.25です。
同じ規格には、「DL-パントテニルアルコール」という別の条もあります。頭の「D-」「DL-」で区別され、それぞれ別の項目として規格が決まっています。成分表は、書かれている名前のとおりに読みます。
医薬品の一般的名称(JAN)のデータベースには、「パンテノール(Panthenol)」という名前があります。化学式C9H19NO4、分子量205.25は、原料規格のD-パントテニルアルコールの条と同じ値です。一方、「パントテニルアルコール」でJANを検索しても、該当はありません。資料によって名前の書かれ方が違うため、成分表ではD-パントテニルアルコールの名前で読みます。
末尾の「アルコール」についても、欄で読みます。女神の前髪の成分表では、D-パントテニルアルコールは有効成分の欄にあります。エタノールと無水エタノールは、その他の成分の欄に、別の項目として書かれています。名前に「アルコール」と付くことと、エタノールが入っているかは、欄を分けて読みます。
成分表示の名前の付け方(業界の自主基準)は、医薬部外品の育毛剤とはに説明があります。
化粧水やクリーム、パックで見かけるのは、その種類の製品に有効成分の前例があるから
いわゆる薬用化粧品は医薬部外品で、品目ごとに承認を受けます。2008年に厚生労働省は、承認申請の参考になる前例を、製品の種類ごとに通知でまとめました。有効成分の名前と規格の前例が、種類別に並んだリストです。
そのリストで、D-パントテニルアルコールの名前があるのは、次の3つの項です。
- 化粧水
- クリーム、乳液、ハンドクリーム、化粧用油
- パック
シャンプーとリンスの項、薬用石けんの項には、名前がありません。シャンプー・リンスは2014年の通知へ、薬用石けんは2018年の通知へ移りましたが、その表にも名前はありません。
化粧水やクリーム、パックの裏で同じ名前に出会うのは、この前例があるからだと編集部は見ています。
このリストは前例をまとめたもので、禁止の表ではありません。表に無い種類には使えない、という意味ではありません。前例の項がいくつあるかも、製品の効能効果とは別の事柄です。効能効果は、製品ごとの承認で決まります。
2008年のリストに、育毛剤の項はありません。育毛剤も、ほかの種類と同じく、品目ごとに承認を受けます。
何のために入っているかは、その製品の「効能効果」の欄で読む
成分の名前を見つけても、編集部はそこから製品の効能効果を読もうとしません。理由は2つあります。
1つは、医薬部外品の承認が、製品ごとに行われることです。名称・成分・分量・用法用量・効能効果などを、1つの製品として審査します。有効成分は、その製品で承認された効能効果のために入っています。
もう1つは、同じD-パントテニルアルコールが、目的の違う種類の製品に入っていることです。化粧水とクリームとパック、そして頭皮に使う育毛剤。承認を受けた効能効果は、それぞれの製品で別です。通知・原料規格・JANで名前の書かれ方が違っても、その製品の効能効果は変わりません。
だから、名前を見つけたら、同じ箱や商品ページの「効能・効果」の欄へ目を移します。欄の場所は、頭皮美容液と女性用育毛剤の違いにまとめています。有効成分が1つ入っていることも、その数も、製品の効能効果の大きさを示しません。

女神の前髪の場合
女神の前髪 薬用スパエッセンス No.8-HINOKI は、医薬部外品の薬用育毛剤です。販売名は「ヘアーローション8 MV」、承認番号は30600DZX00656000です。
成分表示では、D-パントテニルアルコールを有効成分8種の一つとして表示しています。8種は、人参エキス、センブリエキス、セファランチン、グリチルリチン酸2Kです。残る4種は、D-パントテニルアルコール、ニコチン酸アミド、サリチル酸、ジフェンヒドラミンHClです。
効能効果は、成分ごとにではなく、製品として承認を受けた範囲を表示しています。数が8種であることも、効能効果の大きさを示すものではありません。
使う側の理由も、選ぶときの手がかりにしています。天然ヒノキ精油(一部合成香料を併用)の香り。持ち歩ける30mLの大きさ。洗面台に隠さず置けるボトル。
効能効果の詳しい表示は、Amazonの商品ページで確認できます。
残る7つの有効成分と、成分表全体の読み方
成分表全体を、有効成分の欄とその他の成分の欄に分けて読む手順は、頭皮美容液の成分表、どこを見る?にあります。残る7つの名前も、そこで成分表全体の中に置いて確かめられます。
連作の1本目、グリチルリチン酸2Kの名前の対応は、グリチルリチン酸2Kとはの記事で整理しています。医薬部外品の有効成分とは何かは、医薬部外品の育毛剤とはへ。
サリチル酸の名前と、似た名前との区別は、サリチル酸とはの記事で整理しています。
同じく原料規格の条で名前を確かめた成分に、センブリエキスがあります。
成分表の名前と、別のリストに載る別の名前を扱った記事に、ニコチン酸アミドとはがあります。
漢字の成分名と原料規格の名前の関係は、人参エキスとはで整理しています。
原料規格の条名を略した書き方は、ジフェンヒドラミンHClとはで扱っています。
よくある質問
D-パントテニルアルコールとパンテノールは、同じものですか?
成分表の名前はD-パントテニルアルコールで、厚生労働省の通知と医薬部外品原料規格でも同じ名前です。医薬品の一般的名称(JAN)には「パンテノール」があり、化学式と分子量は同じ値です。本記事では成分表の名前で読み、入っている目的は、その製品の効能効果の欄で確かめます。
名前の「D-」は何ですか?
医薬部外品原料規格2021には、「D-パントテニルアルコール」と「DL-パントテニルアルコール」の2つの条があります。頭の記号で区別され、別の項目として規格が決まっています。成分表は、書かれている名前のとおりに読みます。
「アルコール」と付いていますが、エタノールのことですか?
女神の前髪の成分表では、D-パントテニルアルコールは有効成分の欄にあります。エタノールと無水エタノールは、その他の成分の欄に別の項目として書かれています。名前に「アルコール」と付くことと、エタノールが入っているかは、欄を分けて読みます。
化粧水やクリームにも入っているのは、どうしてですか?
厚生労働省の2008年の通知で、化粧水、クリーム等、パックの項に有効成分の前例として挙がっているためです。入っている目的は、製品ごとに、効能効果の欄で確かめます。
頭皮に使う育毛剤にD-パントテニルアルコールが入っていると、何がよいのですか?
成分の名前だけでは、答えが出ません。効能効果は、医薬部外品では製品ごとの承認で決まるからです。読むのは、その製品の効能効果の欄です。女神の前髪の場合は、Amazonの商品ページに効能効果を表示しています。特定の効果を保証するものではありません。
参考資料
- 厚生労働省:いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて(平成20年12月25日)
- 厚生労働省(PMDA掲載):薬用シャンプー及び薬用リンスの承認審査に係る留意事項について(平成26年5月2日)
- 厚生労働省(PMDA掲載):薬用石けんの承認審査に係る留意事項について(平成30年3月29日)
- 厚生労働省(PMDA掲載):医薬部外品原料規格2021について(令和3年3月25日)
- 厚生労働省(PMDA掲載):医薬部外品原料規格2021(本文)
- 国立医薬品食品衛生研究所:日本医薬品一般的名称(JAN)データベース「パンテノール」
まとめ
- 成分表の「D-パントテニルアルコール」は、厚生労働省の通知と医薬部外品原料規格2021でも同じ名前。
- JANの「パンテノール」は、化学式と分子量が同じ名前。成分表では、表示の名前で読む。
- 通知で、化粧水・クリーム等・パックの項に有効成分の前例がある。だから、顔に使う製品でも見かける。
- 入っている目的は、名前でなくその製品の効能効果の欄で読む。
- 女神の前髪は、有効成分8種の一つとしてD-パントテニルアルコールを表示している。
※ 成分の一般的な情報(公的な資料に基づく名称と前例)と、女神の前髪の製品情報を分けて記載しています。本品は医薬部外品です。効果には個人差があります。本品は、髪が生えると約束するものではありません。本記事は成分表示の読み方をご紹介するもので、個々の成分や特定の効果を保証するものではありません。
